島根と鳥取たみ、湯梨浜の中国庭園:中国地方旅行レポ02

かなり時間が経ってしまったけれど、以前書いた01に引き続く中国地方旅行レポを書いておく。

yamamotokanako.hatenablog.com

 

中国地方鳥取、山口へのひとり車旅行。上記の埋め込みリンクから読める01は、最後に訪れた山口でのこと。この同日のYCAMイベントでの角田俊也さんのトークもかなり面白かったのだけれど、どう説明していいのかまったくわからないので潔く端折る。角田さんの作品に触れると、音の性質や音そのものを聴くということが、いかに普段注目されていないかを思い知ることとなる。

 

さて、山口に到着する前は、岩国市にいた。夕方18時ごろに着いて、何をするでもなく、東横インにチェックインして泊まっただけだった。やたらアメリカ式英語を話す屈強な白人や黒人が男女問わず多い。東横インが位置する通りにたむろする、アメリカ人と思われる人たち。よくよく考えれば岩国には米軍基地がある。沖縄のパークアベニュー通りみたいだ。その日は土曜の夜で、なるほど街に繰り出す米軍人が多いということか。そうか、じゃあここはコザの週末とも通じるのかも。いやいや、私は車を持ってなかったから週末のコザやパークアベニューなんて行ったことなかったじゃないか。と、岩国と沖縄の共通点を見出せもしないのにぐるぐる考えながら、夕食に、米軍人も訪れているインド料理店へ。インド料理店こそ、グローバリズムの象徴かもしれない。北谷にもインド料理店は多かった。米軍がいれば、インド料理店がある。

 

本来は岩国のヒマールという本屋に行ってみたかったのだけれど、夕方18時ごろに着いたので訪れることができなくなってしまっていた。その前は、予定を変更して、島根県をうろついていた。松江と出雲へ。出雲では書店を2軒訪れる。句読点、あわい堂。前者は古本と新刊。後者は新刊のみ。徒歩圏内に違ったタイプの個人経営書店が2軒あることの贅沢さを想像する。街並みと木造の建造物が非常に落ち着いていて浮ついていない。もしかして天気の良い週末で、しかもコロナ前とかだったらこの街にも観光客が押し寄せていただんだろうか? 

 

松江と出雲に行く予定はなかったのだけれど、その前に2泊した鳥取で、その2つの市の状況を聞いたから、行ってみようと思ったのだった。

 

鳥取では鳥取市でも米子市でもなく、湯梨浜町にのみ訪れた。山口にいくならついでに、と、ついでの位置ではないのに行ったことのなかった「たみ」に泊まってみることにした。ゲストハウスである「たみ」のオーナー、蛇谷りえさんのことは前から知っていたので、宿泊予約と同時に連絡をとって、現地でともに夕食を食べた。蛇谷さんのおすすめする、回転寿司屋へ。さすが日本海の街で、抜群のうまさだった。

 

SNSで繋がっていない蛇谷さんと久々にあれこれと話した。SNSで繋がっていなくても、こうして訪ねることのできる友人がいることに、ホッとした。そういえば、自宅以外で寝泊まりするのも実に久々だった。たみの個室は和室で、木造ならではの壁の薄さで遮音性は低いが、妙に落ち着いた。通常、自宅以外で寝る日はあまり寝れない私が、たみの個室では爆睡していた。真っ白な秋田犬の「おとうさん」にも会うことができた。

 

湯梨浜町といえば、他にも汽水空港という本屋や、jig theaterという映画館がある。というか、「文化的な交流が生まれる拠点は、たみと、汽水空港と、jig theaterしかない」という表現のほうが正しい。この3軒しかないし、特に地元のもともとの風景とうまく混じりあったりしているような感じもしないけれども、地元にもとからあったものと反発してそこにあるのではなく、ただそこにある感じ。地方や地域で何かをやるとなると「もともとの地域コミュニティと交わる」ことが重要視されることが多いが、湯梨浜町の場合は、たみと汽水空港とjig theaterが新しい世代の地域コミュニティを新しくつくりあげた感じなのかもしれない。コミュニティなんていう言葉、そもそも都会に住んでる町内会もしらない人がつくりだした言葉なのかもな、とか思いながら、湯梨浜のなんだか寂しい二十世紀梨の看板を眺める。

 

この旅行の初日、神戸を車で出て、たみに着いたのは夜20時ごろだった。神戸を出たのは16時半ぐらい。3時間と少し、走りっぱなしで休憩することもなく到着してしまった。その夜はたみから近い温泉がすでに閉まっていると聞いたので悔しいながらもすぐに寝た。翌日、雨が降り続けるなか、多少のメール業務をこなし、雨は降ってても外に出たいと思った。

 

昨夜、たみのスタッフの方から聞いた温泉のひとつが、どうやら中国庭園のエリアにあるらしい。Googleマップで確認すると、その中国庭園の名前は「燕趙園」。Googleマップからみることのできる写真は、なかなかすごい中国庭園だ。スケールがでかそうなので、無性に気になってきた。

 

小雨の降る中、散歩も兼ねて燕趙園へ。到着すると、笑いたくなってくる。中国で見た観光地にそっくりだ。特に、福建省の平潭島にそっくりだ。平潭にあった特別区。だだっぴろい土地を整備して、テーマパークのような古い街並みを再現した街をつくってしまい、なかには飲食店やホテルがある。けれども、人が少なく、土地の広さが際立つ。

 

鳥取県と中国河北省の友好提携5周年を記念して建てられたらしい。那覇市と福州市の友好関係のもとにつくられた「福州園」ともよく似ていた。入口の門をくぐる。いや、福州園よりもめっちゃ広くて、福州園よりももっと中国。福州園はやっぱり沖縄の気候により植物がジャングル化して維持が難しいんだと聞いていたが、燕趙園のこの庭園としてのきれいさは、気候だけではなく、建築時期が最近なのでは?と思い調べてみたら1995年開園。1992年開園の福州園とあまりかわらない。庭園の奥に行けば、そこから日本海が見渡せるという、中国庭園のつくりで考えれば異常な景色もこれまた特別で贅沢と思える。なぜか毎日のように雑技ショーをやっているようで、ありがたく鑑賞する。おそらく中国からやってきた、雑技の訓練を受けてきた若いパフォーマー2人(男一人、女一人)のハラハラする本気の雑技のあいだに、なぜか変臉ショーが。おそらくこの変臉ショーのパフォーマーだけ、中国で生粋の中国芸能の訓練を受けていない日本人だ。身体の動かし方で見抜いてしまう。琉球舞踊とかもそうだけれど、中国の伝統芸能(京劇や中国伝統劇も含む)を基礎から叩き込まれてきた人は、姿勢のつくりかた、指先の動かし方、身体動作のリズムと静止、そういったものが別格である。あれはちょっと真似してみようと思ってできるものではないし、基本を身体の根元から覚えさせないとああいうふうにはならない。口で言葉で言い表して伝わるものではなく、基礎の動きを何度も何度も繰り返して身体の筋肉に覚えさせ、脳とは別のところから生まれてくる動きだと思う。

 

 

雑技ショーを見たあとは、なんともいえない興奮した気持ちを抑えるべく、さきほど売店で購入していた大山おいしい牛乳モナカを庭園で食べる。大山乳業の商品は、どれを食べてもおいしい。牛乳の濃さ。

もし自分が湯梨浜出身だったり湯梨浜に住んでいたりしたら、税金の使い道としてこの規模の中国庭園がアリかどうか、考えさせられることになるんだろう。手放しに「良いところ」と推奨できない奥深さも含めて、やっぱり湯梨浜に行くときはあの燕趙園への訪問も勧めたい。

 

全国の中国庭園調査、近々本腰入れてやってみようと思う。文化行政もそれなりに見てきた私の分析で、意外なものが見えてきそうな予感もする。