冒頭試し読み「はじめに」『個人メディアを十年やってわかったこととわからなかったこと』

新しい小冊子『個人メディアを十年やってわかったこととわからなかったこと――オルタナティブ・ネット・音楽シーン』を6月21日に発行します。つきましては、冒頭に書いた「はじめに」を全文公開します。「続きを読む」からご覧ください。

 

書店で取り扱いを希望される方は、お気軽にご連絡ください。連絡先は、 info.offshoremccアットマークGメールです。

 

offshore.thebase.in

 

*もくじ*

  • オルタナティブについてわかったこと――形骸化するオルタナティブと、仕事化されないオルタナティブ        
  • ウェブやSNSについてわかったこと――エコーチェンバーのネットにちょうど良いサイズの社会を求めて    
  • 日本の音楽シーンについて、わからなかったこと――興行ビザ/ツアー収支とギャラ定額制/対バン文化 
続きを読む

上海ロックダウンとSNS

最近WeChatタイムラインを見ていると、あんぐりと口をあけてしまう。地方都市の中の上クラスのレストランで赤ワインを嗜んでいる友人の写真が流れてきたり、即興音楽のライブ映像が流れてきたり、ライブ情報の告知記事が流れてきたりもするなかに、ロックダウン中の上海での過酷な現状を訴える記事、写真、動画が挟まれる。

 

北京で冬季五輪が開催された2022年2月、その前後を含めてこの1年ぐらい、深刻で衝撃的なニュースが多い中国。鎖に繋がれた女性の抖音動画を発端とした人身売買問題は、もともと農村の女性が置かれてきた環境を浮き彫りにし、男尊女卑と人権軽視にまみれた農村社会に憤怒し改善を試みる人たちが立ち上がり、たくさんの記事やその後のレポートが書かれている。私の友人の一部は、そういった記事を熱心にWeChatでもシェアしていた。

続きを読む

感情あふれる4月の日々

4月1日から勤めに出ているのだが、前回書いたことがまったく自分にとって役に立っていなくて笑えるほどである。レジリエンスとかアサーションとか、ああいったセミナーを受けてきた失業期間の成果が見られない。さっそく、久々の勤めにイライラしたりウンザリしたり。

 

ただ、そんな自分を若干引いた視点から見ることはなんとかできているから、ほんの僅かな成果はあった、と言って良いのかもしれない。今日は一日休みでいろいろ散歩しながら考えてしまったが、たぶん、またまもなく私は勤めることをやめてしまうんだろう。

 

その、若干引いた視点とは何か。

私は、常に「情」でものごとを見ているのだ、ということが見えてきた。

続きを読む

我なりの自己啓発について

好久不见!

年度末。この年度末、実は見事な同時進行で2本、大学関係の冊子編集を担当して、2月からつい数日前まで根詰めておりました。ひとつは大学内のみで配布される冊子ですが、もうひとつのほう(こちらは最終的に190ページでしたね……)はまもなくどこかでPDF版も公開されるかと思います。そしてまもなくまた新年度、4月がやってくる。

 

この1年は、流行りの言葉ではデトックスと言うのか、厄祓いなのか、身体と精神をつくりなおすような期間だった。下調べ不足でのフルタイム就職→無残に惨敗→不眠を背負って休職・退職。それからは失業状態。失業状態ももうすぐ終わってしまうが、以前の自分らしかった生活スタイルと同じく、週3程度でパートに行き、あとの時間は自分のことをする。自営業&パートの兼業をやることにした。きっと、オフショアも4月以降はしっかり動かせることでしょう……。4月にはいるとさっそくひとつのおしらせを打つ予定。

 

大学関係の冊子づくりで忙しいなかでも、「ああこれブログに書き残しておきたいな、いつ死ぬかわからんし」と思っていたことが、今書いている「我なりの自己啓発について」である。

続きを読む

2022春晩に関しての若干の意見(包摂、コンテンポラリーと伝統、旧来型家族観)

このタイトルをつけたかっただけ*1のブログ記事となるが、2022年春晩のミニ・レポートを。

 

春晩とは、中国で毎年旧正月の前夜(つまり大晦日)に開催される、ステージ・パフォーマンスを集めた番組。歌あり、喜劇あり、相声(漫才のような2人の掛け合いしゃべり芸)あり、踊りにマジックに、京劇などの伝統劇のパフォーマンスも、とにかく何もかもがこの4時間ぐらいの番組で見られる。


しかし、なんだかこの数年は年に何回も春晩的な豪華絢爛、大盤振る舞いの舞台演出中継を、中国の動画サイトかCCTVで見ているような気持ちになる。思い出せば、昨年2021年7月1日、中国共産党誕生100周年の日にも、春晩ではないがお祝いの番組が盛大に開催された。そして、2021年10月1日の国慶節も、何かこういった演出の中継はあったんだったっけ? アンディ・ラウが3Dの牛といっしょに踊り歌っていたのは、2021年の春晩、もう1年もまえのことなのか……。

 

youtu.be

 

今もう一度この動画を見返すと、昨年の春晩のほうが今年のそれよりも、ぐっと豪華だったような気もする。

*1:Googleに「若干意见」と入れて検索ボタンを押せば、「(略)若干意见」とタイトルの付いた中国の行政文書がやまほど出てくる。日本語の意味とほぼ同じで、私は「若干」という言葉が公的な文書のタイトルとして使われるのが面白いなあと思ってなぜか気に入っている。一番有名な中国における「若干」文書は、「建国以来の党の若干の歴史問題についての決議」こと、「中国共产党中央委员会关于建国以来党的若干历史问题的决议」だろう。

続きを読む

犬を怖がる - 犬との一週間(3)

普段あまりYouTubeを見ない私にも、犬のおかげでついに推しチャンネルができた。遠藤エマさんの『エマ犬(けん)アカデミー』だ。ドッグトレーナーである遠藤エマ先生は、横浜で犬のトレーニング教室を主宰しているらしい。明るく楽しくハキハキした声。たまに、遠藤エマ先生は犬の物真似をする。ロープやおもちゃを使って犬と「引っ張りっこ」をしたときにだんだん興奮してきた犬が本能を思い出して唸りはじめる様子を真似る。また、仔犬やまだ若い犬がブラッシングのとき、そのブラシや人間の手にじゃれてだんだん興奮して甘噛みしようとする様子も真似たりする。例を挙げたこの2つ、どちらも私は犬との1週間の生活の中で経験しており、遠藤エマ先生が(人間なのに)ここまで犬の物真似がうまいことにおどろいた。犬にそっくり。うまい。そう、そう、そう、私がお世話していた犬も、遠藤エマ先生の犬真似と同じような動き方と唸り方を出していた。


また、おそらく遠藤エマ先生自ら描いていらっしゃると思われる、スライド中の絵も非常に好感が持てる。一世を風靡した「いらすとや」やフリー素材を使わずに、擬人化した犬の気持ちを巧妙に絵で表している。思惑通りに飼い主の気を引くことができてガッツポーズする犬。ケージやサークルに閉じ込められることを拒否し自由を求めてデモ運動真っ最中のハチマキまいた犬。犬の体を忠実にデッサンした絵ではなく、デフォルメされていて、ポップで、どちらかというと子供が描いたような絵。毛むくじゃらの丸くて茶色い、お世辞にも上手いとはいえない絵。笑ってしまいそうなのだけれど、どうしてかこの絵も、非常に心打たれる。


そんな遠藤エマ先生は、自己紹介のYouTube動画では「しつけという言葉があまり好きじゃない」という。犬に言うことを聞かせるのではなく、犬の習性を飼い主がよく理解し、話すことのできない犬の行動やしぐさや変化をしっかり観察する。そうすることで、犬の気持ちを理解できるようになり、犬と人間のあいだの齟齬をなるべく減らし、犬も人間も幸せな共同生活が送れるようにする。ドッグトレーナーという肩書きの遠藤エマ先生ではあるが、犬にトレーニングさせるということはあくまでも人間側からの視点であること、そしてどんな犬だって楽しく幸せな生活を送りたいと願っていることを認識させられる。この世に生まれた動物にとって当たり前のことだ。苦しいことや恐怖や悲しみからは距離を置き、楽に、自然に、愉快に生きる。犬も猫も愛玩動物といわれるが、人間にかわいがられるために自ら好んで犬や猫として生まれたわけではない。彼ら彼女らに「愛玩」という役割をはめるのは人間だけである。

続きを読む

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/12/19_撮られること

kitakagaya fleaに1時間程度遊びに行く。久々にお会いしたとある人と、その1時間のうち30分程度話す。

その後は神戸に戻り、とあるアート系施設の小さなイベントへ。なかなかの行動量。こんなに動く日は何年振りか。実は北加賀屋に行く前は、大阪市立図書館へ。神戸市立図書館にはない蔵書を、大阪市で借りる。

4冊のハードカバー人文書が入ったリュックで北加賀屋を神戸をうろうろ。いや、うろうろしていた時間が一番長かったのは、地下鉄と電車だ。移動中が一番運動している。

北加賀屋は寒いが快晴で助かった。来場者には若い20代ぐらいの方たちが多く、女性が多い。みんな目元の化粧をばっちりしている。私がもし出店していたとしたら、このようなメイクの流行りもキャッチしている人たちに訴求できるだろうか。私は人より見た目を気にしないほうで、メイクをバッチリしている人に会うと、気後れしたりすることがある。メイクをする女性の方が、経済的にも文化的にも余裕があり、そのような人から見れば、私は文化的にレベルが低いと思われてしまうのではないか。
とか考えてしまうのは、最近社会学の本を読みすぎだからかもしれない。人は、常に文化闘争をしている。

続きを読む