読みどころのご紹介(『オフショア』第三号―2023/8/22[農暦七月七日 七夕]発売)

『オフショア』第三号、無事に発売となりました! 

オフショア第三号

オフショア第三号
演劇、音楽、アートに関わる方、つくり手の方には特に読んでいただきたい号。(というか、自分がそのフィールド出身なので、その界隈の方々に向けてつくっていると言っても過言ではないです。)
 
下記、編集・発行人の山本佳奈子より、ご紹介です。
 
<『オフショア』第三号のもくじ>
■武田力インタビュー「分断を越えるための演出術――俳優と民俗芸能の経験から」聞き手・構成:山本佳奈子
■「芸術と力 ジョグジャカルタの知」金悠進 
■「私は如何にして心配するのを止めてマレーシアの生活を楽しむようになったか」友田とん
■連載・第三回「台湾における市民による地下メディア実践と民主化との関係――1990年代の台湾の地下ラジオ運動を軸として」『巻き起こった地下ラジオ旋風』和田敬 
聞き書き・第三回「営業のさちよさん」檀上遼 
■「プンムルと追悼――演奏を通じた加害の歴史の語りなおし」齊藤聡
■「わたしと、中国の幾つかのこと」長嶺亮子

表紙装画:胡 沁迪(フー・チンディ)
ロゴ・表紙デザイン:三宅 彩
 

offshore-mcc.net



🐙表紙は、タコ🐙
冒頭の武田力(たけだ・りき)インタビューで出てくるタコのネガティブなイメージ(=侵略者としての表象)を頭に置きつつ、以前からタコの脚を”かわいらしく”描いてきた中国杭州の版画家・胡沁迪(フー・チンディ)に、タコの木版画を提供してもらいました。


<読みどころ>
下記、編集・発行人の山本佳奈子による簡単なご紹介です。
手に取ったお客様との雑談にもぜひご活用ください!

演劇やアートの現場で活躍する武田力(たけだ・りき)のインタビューを巻頭に収録。まずは、チェルフィッチュにて俳優として活動していた頃の経験から。「アンチ・チェルフィッチュ」と言いつつ、チェルフィッチュの身体性がなければ今のようになっていない武田のキャリアを、自身の言葉で語っています。
戦争で日本軍からの被害を大きく受けたフィリピン・マニラにて、戦争記憶にあえて触れながら《たこを焼く》という作品をつくった武田力。民俗芸能とアジア、民主主義と西洋、読めば読むほど思考の材料が出てくるような仕掛けにしています。
武田力は現在東京都現代美術館で開催中の展覧会「あ、共感とかじゃなくて。」に参加中

インドネシアのロック音楽と政治の関係を研究する金悠進(きむ・ゆじん)に、山口市YCAMへ行ってジョグジャカルタ出身女性8名のグループ「バクダパン・フード・スタディ・グループ」による展覧会を鑑賞してもらい、批評文とは少し違う、エッセイタイプの文章を寄稿してもらいました。
オランダ統治と日本統治の時代を経て、今は開発に躍起になる国内の政治家に押さえつけられるジョグジャカルタの権力構造。(金悠進の最新著『ポピュラー音楽と現代政治—インドネシア 自立と依存の文化実践 』をあわせて読むと、ジョコウィ大統領の人気と政策や、インドネシアの社会についてもよく理解できます。)インドネシアの政治や社会を全く知らなくても、読みやすく仕上がっています。

  • 「代わりに読む人」友田とんの、マレーシア駐在時代の記憶
「代わりに読む人」代表で、作家の友田とん。マレーシア・イポーでエンジニアをやっていらっしゃった時代のエッセイを、書き下ろしていただきました。なーんにも起こらない。けれど、どうしてこんなに掴まれるのでしょうか。圧巻のエッセイ、とにかくおすすめです。

  • 台湾地下ラジオ連載、ついに地下ラジオの勃興の話に
連載第3回目を迎えた、ローカルメディア研究者・和田敬(わだ・たかし)による論考。ついに、台湾で地下ラジオが生まれ始めた時代の話に突入です。タクシー運転手たちの立ち上がる様子は勇気付けられます。また、聴取者参加型のCall-inスタイルの中でも、今のSNSと同様「炎上」に似たようなことはあったんですね。我々がまったく知らない、カワイイでもオイシイでもない台湾の「政治的な顔」を、深く知ることのできる連載です。

  • 中国語圏の境界を超えてきた家族の一人の、生活史。
檀上遼(だんじょう・りょう)の聞き書き連載は、檀上さんとも近いアイデンティティを持つ女性にインタビュー。編者山本が一番衝撃だったのは、最後のお葬式のお話。お葬式って、同じアジアでも、それぞれに違いますよね。

音楽ライターの齊藤聡(さいとう・あきら)が書いたのは、一般社団法人ほうせんかによる韓国・朝鮮人犠牲者追悼式のようす。フリージャズや即興演奏と、朝鮮のプンムルが、どう、つながるのか? ほうせんかによる追悼式、今年は9/2(土)開催とのことです

  • 中国の市井の人たちの素顔
ポロッと「日本鬼子」と笑い話で言ってしまう人。他意なく公共の場で「中国と日本、いろいろあるけどうまくやっていこうね」と言う中国の若者――。中国音楽や中国伝統劇を研究しつづける長嶺亮子(ながみね・りょうこ)は、豊富な現地調査のなかで出会ってきた、中国の人たちの素顔を引き出してくれました。
 
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編集者としての余裕?も出てきたのか、最初から最後まで、私も言いたいことを言わせてもらっている号です。

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