クロスレビュー(年間パスがお得※私は9/30に)

演出家である篠田千明(しのだちはる)さんの『ZOO』(原作:マヌエラ・インファンテ)が、2018年の乌镇戏剧节(Wuzhen Theatre Festival)に招聘された時、私も一緒に乌镇(Wuzhen)に行った。渡航まで半年以上にわたる契約書のやり取りから現地フェスのマネージャーとのコミュニケーション、日本側の技術スタッフと役者のビザ取得や現地での諸々の作業等を、制作スタッフとして担当した。

 

(ちなみに、たまにアート関係で制作的な仕事をしますが、結局は文章を書く、言葉にすることが制作の仕事の大きな意味だと思っている。人と人のコミュニケーションのあいだにあるのは言葉だし、予算や支出積算だって、大きな意味で言えば数字を用いて状態を可視化することとなり、つまりは、お財布状況を精密に言語化することでもある。)

 

篠田さんチーム『ZOO』での乌镇行きの経験における、カルチャーショックならぬ「ウーヂェン(Wuzhen)ショック」みたいなものは、いつかまた日をあらためて書きたいなあと思いながら、もうあれから3年が経とうとしている。

中国では今、リアリティショー形式の番組が大流行しているが、今年のはじめ、この乌镇を舞台にしたリアリティショーも放送されていて、乌镇戏剧节に密接に関わる。乌镇戏剧节常連だったり賞を獲得した若手から、ベテランまで、約8人の舞台役者たちがチームで演劇を行いながら生活費を獲得していくというもの。これについてまもなく全放送回を見終わるので、このレビューを書くついでに『ZOO』in乌镇についても書きたいところ。

 

本題がそれたけれど、先日、その篠田千明さんに紹介してもらい、劇作家の岸井大輔さんとお会いした。(Zoomで。)

 

自己紹介するなり、すぐにこのような面白い企画に御誘いいただき、昨夜1回目の登場を終えたところ。

 

playsand.work

 

メルマガやSNSではちらりと告知したけれど、あらためて。

9月30日は、米光一成さんがゲームの『ミクロマクロ:クライムシティ』、河野聡子さんがマンガの『女の園の星』、そして私山本が音楽アルバムの『There is no music from China』を取り上げ、この3作品を3者+司会・企画の岸井大輔さん、齋藤恵汰さんとで話すことになる。

 

年間パスでは毎月末のクロスレビュー放送を視聴でき、特典回も視聴できる。昨夜私が登場したのは特典回。都度の支払いとなるが、バラでの視聴も可能。

ウェブサイトからステイトメントを引用する。

 

深く広く楽しみたい。けれどコンテンツの沼は深すぎ、ネットは広大で、どうしても自分の慣れ親しんだジャンルばかり楽しんでしまう。そんな人に様々なジャンルを紹介していくオンライン番組です。
毎月、専門の異なる3名のレビュアーが、分野の異なる3つのコンテンツを共有し、3人で語りつくします。
1年で36のコンテンツと様々なレベルのレビューを紹介。新たな作品や表現との出会いこそ、人生を変えていく。そう信じる皆さん是非ご鑑賞ください。

 

コロナ禍で、身体的には特定の人・コミュニティとしか接しなくなっている代わりに、インターネットやSNSなどを経由した非身体的な空間では、専門外や普段接しないコミュニティと気軽に接することができる。錯覚かもしれないが、フットワークが軽くなったような気もする。私が最近中国のリアリティショー番組なんかを、ミーハーだなあと思いながらも見ていることに関しても、中国の動画配信プラットフォームが充実して便利になって、日本からでも気軽に鑑賞できることの証明でもある。中国には物理的には行けないのに、番組を見ていると、今自分は中国で暮らしていた時ぐらい中国語に親しんでいるような気もする。おかげさまで、今は中国の地下音楽だけでなく、映画や現代演劇や、ちょっとエンタメ寄りの情報にも少し親しくなった。でも、分野を超えていろいろ楽しめるようになったからと言って、それが一人だけの閉ざされた空間での楽しみにとどまってしまうのが、ソーシャル・ディスタンスを基本とする状況。今ここが中国であるような錯覚には陥っても、それは閉ざされた空間だからこそ没入できるということの表れでもある。

 

まったく違う分野の3名がそれぞれ3分野からオススメ(あるいはオススメではないけど気になる作品等)を持ってきて、分野を超えてああだこうだ批評を展開できる場。異種格闘戦のようだけれど、共通する何かが見えてくる。そして、人間というもの、どうしても他の場にも何か共通言語を見つけ出したくなってしまうのが本能なのだと思う。この企画、かなり面白いと私は感じています。

 

昨夜は、レビュアーの皆様と年パス購入の方に向けての山本紹介となる特典放送回。一緒に参加してくださった興行研究者の田中里奈さんが、この回のために提案してくださったレビュー作品は劇団四季の『李香蘭』。

劇団四季、実はCATかライオン・キングだったか、どちらだったかをそもそも記憶していないぐらいこれまで興味を持っておらず、劇団四季に限らずミュージカルと縁のなかった私。岸井さんと田中さんの分析を昨夜Zoomを通して聞いているなかで、ハッと気づいた恐ろしいことが一点。私は、脳内で勝手に抗日劇や革命京劇と比較して観てしまっていたようだ(!!!)。私の脳、あらゆるものの標準値が、限りなく中国国内に近づいている……。軍服が登場する舞台を「よくあるもの」として捉えてしまっている自分に、昨夜、気づくことができた。そのうち、私の脳内にはVPNでしかアクセスできないエリアができたりするんじゃないだろうか……。

 

私から提案したレビュー作品であるZoomin' Nightからリリースされた『There is no music from China』は、岸井さん・田中さんには意外と好評だったので、9月30日のクロスレビュー本チャン回では、違う角度の評価も聞けたらいいなあと期待している。また、私の宿題として、「聴覚で受け取った音情報への評価」は可能なのかどうか(アクースマティックとも言えるかもしれないけどちょっと違う気もしている)というところを、もう少し自分なりに詰めて考えておきたい。

 

というわけで、興味のある方はぜひ上記の「クロスレビュー」ウェブサイトへのリンクをクリックしてみてください。