神戸豚まん調査(1)皮と餡の特徴なし

以前、大阪市此花区に居住していたわずか1年ほどのあいだに、大阪の中華料理屋と中華食材屋についてほんの少し調べて書いたzineを発行した。そのあとがきに、「神戸に引っ越すかもしれない」と書き、そして実際に私は神戸に引っ越した。

 

神戸に引っ越したら、神戸こそ南京町と呼ばれる中華街があり、中国料理も星の数ほどあるので、もちろん、またお気に入りの中国料理屋を探したり調べたりするんだろうと思っていた。

 

神戸で街を歩く。赤や金色の装飾が目に入る。漢字の店名。入りたい。食べたい。気になる店にはなるべく入りたい。でも、そんなことばっかりしてると金がなくなる。食い倒れてしまう。

 

どうしたものかなあと悶々としていたのだけれど、私のような低所得者でも気軽に調査できる中国料理があるではないか!豚まん!神戸といえば、豚まんよ!神戸豚まんzine作ろう!

 

というわけで、私は今、神戸の豚まんを調査している。調査とは何か。豚まんを販売している店を見つける。豚まんを買う。家に帰る。豚まんを蒸し器で温める。食べる。シンプルである。

 

神戸に引っ越したのが2020年の10月末。年末ぐらいには、「そうだ、豚まん調べよ」と思いついていたと思うから、かれこれもう半年ぐらいは気長に豚まんを探して食べている。ただし、飽きては調査自体がつまらなくなるので、毎日豚まんを食べるようなことはしない。一度豚まんを食べたら、基本的には、1週間はおあずけにする。(あれ、私、別にそんなに豚まんが好きじゃないのかもしれない……)

 

そして、たまにネットで調べる。私がまだ食べてない豚まんはどこにあるか。え、三宮の一貫楼とか太平閣とかもすべて食べるとしたら、これ無限だな……。きりがない。豚まん。そして思い出せなくなる。あれ、あの豚まん、どんな味やったっけ?どんなシチュエーションで食べたっけ?中の餡、甘かったっけ?淡白だったっけ?忘れてしまうのだ。

 

そんな記憶の消失防止と、なかなかペースアップしない私の豚まん調査に拍車をかけるべく、zineとは別でブログに少しずつ調査の記録を書いていくことにする。

 

今日は久々に某商店街(神戸の台所)で豚まんを購入。以前もここで買ったことがあったが、最近、種類が増えていて、基本は豚肉の餡なのだけれど、ミックスされている野菜がいくつか選べる。今日は3種類が用意されていたので、それぞれ1つずつ買い、家でそのうちの2つを蒸し器にセット。

 

しっかり目に蒸したのがよかったのか、かぶりつくと、肉汁がジュワッと手にこぼれ落ちて熱い。口の中を少し火傷。一口かぶり、かぶった断面を眺める。肉の量。皮と肉が接している部分の油でつやつやした感じ。傾けるとこぼれそうになる透明な肉汁。綺麗にヒダを作って包まれてキュッとなっている皮のあたまの部分。玉ねぎ&豚肉の豚まんと、芹&豚肉の豚まんを食べたが、前者の方が、玉ねぎの水分のせいか、ジュワッと漏れ出る肉汁の量も多い。

 

神戸の豚まんといえば、甘辛く醤油で味付けされた餡の豚まんが多いが、ここの豚まんは、私が中国で食べた豚まんに近く、醤油の味は付いていない。

 

食べ終わって、皮の存在感があまりにもなかったことに気づく。肉汁と肉に気を取られているうちに、無のまま私の胃におさまった、皮。ぼてっとしっかり分厚い皮だったが、ごわごわしておらず、ふわふわすぎず。ニュートラルど真ん中。特徴なし。販売のお姉さん、「うちで作ってますよ〜」と言っていたけど、皮の生地の配合からやってるのだろうか?でも生地だけ買うなんていうのも、工程を考えると非現実的だよなあ。

 

肉汁以外は、皮にも肉餡にも特徴がなかった豚まんだったけど、これこそ「很标准」(標準)。存在感を主張しないからこその皮と餡の互いのバランスの取り方というものがあるのかもしれない。そして、それこそオーソドックスで、何度でも食べたい豚まんなのかもしれない。