対コロナ便乗型生活見直し記録5/19

 covid-19に立ち向かう生活。最初の方はアドレナリンも出ていろんなことに首を突っ込もう、いろんなことをこの時期に思索しよう、と思っていたが、ゴールデンウィークを境にすっかりすべてのやる気がなくなった。午前中、明らかに抑うつ傾向にあり、夜に近づくにつれて明るい気分になってくる。これはまずいと思い、無理に何かをやろうとしない、今は何もしないことが最高の賢い過ごし方、と言い聞かせ、covid-19関連のニュースもSNSもなるべく切っている。

 

 そういえば、こんなニュース寄せ集め表も作ってみたりしていた。5月9日で止まった。こういうことは最後まで完遂して抜け殻になってしまうタイプだったのだが、それを阻止するために「途中でやめる」ことを習得した自分が非常に聡明。

 

docs.google.com

 


 某文化施設における週3、4日の勤務においては、4月下旬から私も在宅勤務させてもらっている。ところが、在宅で勤務しようにも、ポケットWi-Fiの調子がどうも悪く、しょっちゅうルーターを再起動しないと繋がらなくなったりする。それで、家から徒歩2分の、アーティスト・ラン・スペースFIGYAの光ネットをお借りしに、よくお邪魔するようになった。

 

 そうすると必然的にFIGYA一家すなわちアーティストであるmizutamaの一家とよく合流することになり、最近はぬけぬけと週1、2回のペースで晩御飯を共に食べていたりする。mizutama(とうちゃん)、mizutama妻(かあちゃん)、mizutama娘(M子4歳もうすぐ5歳)の3人に、加えて私が一緒にちゃぶ台を囲む。

 

 M子もだいぶ私に慣れてきたようで、FIGYAで仕事中の私を見つけると寄ってきて、ZOOMで会議中の私にこう囁く。

 

「あとで、ちょびっとだけ(親指と人差し指でつまんだような形をつくり、それを片目の前に透かしながら)、遊ぼう。ちょびっとだけ。」

 

 ほんならあとでちょびっとだけな、と言い仕事が終わるとM子を遊びに誘う。全開のテンションでしまじろうスゴロクの司会を担当する。「歌手になる。好きな歌をうたえたらお金1枚もらう」と書かれたコマで止まったM子に「好きな歌うたってください」とリクエストすると、「パプリーカ、花がさいーたーらあ」と始まる。サビをじっくり聴き終わって、何やってんねやろうな自分、と思うよりも、あまり普段じっくり聴くことのない米津玄師『パプリカ』の歌詞を噛みしめる。

 

 スゴロクが終わるころ帰ってきた"かあちゃん"に「むっちゃ声(外に)聞こえてたで」と言われる。

 

 M子も長らくcovid-19のおかげで保育園に行っておらず、同世代の友達と遊べていない。同世代でおもちゃを取り合い、喧嘩し、泣かし泣かされ、怒られる。そういう経験を「嫌われたらどうしよう」などと考えずに、自我のエゴ全開でやってみることができる年齢なのに、今covid-19のせいでできないのは少しかわいそう。かと言って、一緒に遊んでくれるとうちゃんでもかあちゃんでもない血の繋がっていない近所のおばちゃんは、M子からエゴ全開でおもちゃを取り上げたりしないし、スゴロクのサイコロ振ってズルしたりとかしない。私はあくまでも36歳の大人としてM子と遊んでいる。少し不憫に思う。

 

 YouTubeのママゴト動画で覚えたお姉さん言葉を最近そのまま使ったりするM子は、私を、年上だとは思っていない。自分より身体が大きいことはすでに理解しているが、年齢で言うと、もしかしたら、とうちゃんよりかあちゃんより下で、M子に限りなく近い、保育園にいる友達と変わらないと思っていそうである。特に具体的に言葉で言われたわけではないが、そう感じる言動がたまにある。事実は、とうちゃんより年上で、かあちゃんより年下なのである。

 

 そんなM子はよく私に「おいで、おいで」と言って手招きし、私の手を引っ張る。ここ数年生きていて、人に言われて一番どきっとした言葉かもしれない。女の子はこれぐらいの年齢から"ませ"ていくのだ。

 

 どきっとしたと同時に、やはり中国に浸された私の脳は、すぐに脳内で「过来」(グオライ=中国語で「おいで」の意味)と変換する。福州の道端でたくさん聞いたグオライ。小さな子供や赤ちゃんに対してのグオライ。小型犬に対してのグオライ。なぜか放し飼いで飼われていた賢いドーベルマン系雑種に対してのグオライ。あと、何もわからず学校内でうろうろしていたときに先生に言われたグオライ。中国語のグオライのほうが日本語の「おいで」よりもう少し汎用性があるような気はするが、今、また中国で「グオライ!」と呼ばれたら少しどきっとするだろう。

 

 今のM子はどんな言葉も素早く吸収していくので、今度「おいで」という言葉を使ったら、ついでに「グオライ」も念のため教えておこうと思う。来たる国際社会に備えて。 

 

2020年11月 noteより移行