身体の声を聞き観察する/不眠と肩こりとストレッチ

肩こりと背中のこりがひどく、どうしたものか困り果てていて、こんなときはたいていの人はマッサージや鍼灸院に行ったりするのだろうけど、なぜか意地でも行かず、じっと家で自分の身体の声を聞こうと健気に日々試行錯誤をしていたら、理解できたことがいくつかあったので、記しておく。

 

4月後半あたりから、仕事が原因で不眠の傾向があった。もちろん毎日眠れていないわけではなく、眠れる日が1日あれば、続く2、3日はあまり眠れた気がしないという日。しかし、眠れた気がしない日でも、まったく眠れていないというわけではなく、夢を見るノンレム睡眠はきちんととっているという状況。でも、あのまったく記憶皆無となるレム睡眠の深さを感じなければ、やっぱり翌日どよーんと重い気持ちになる。

もちろん、心療内科睡眠薬を処方してもらっていたが、非常に弱めの薬なので、たいして効かないことも多い。でも、これ以上強い薬を飲む気にもならない。(だって、不眠なんて原因を取り除けばあれよあれよと治ることを私も理解しているから。)

それから、現在も完全に不眠の不安がなくなったわけではないので、約3ヶ月不眠と戦っていることになる。あらためて文字にすると、自分、ストレス管理きちんとしないとまずいな……。

 

ゆっくりしか改善しない不眠と、固まる身体

それでも、この3ヶ月のあいだ、原因から離れたことで、ゆっくりと睡眠を取り戻しつつあった。しかし、私の誤算はこの「ゆっくり」の程度だった。以前も不眠に陥ったことはあったので、その時と同じように、原因を取り除き、楽しいことを自分の生活に詰め込めば、すぐにどっぷりと深い睡眠をとれるようになると思っていた。でも、今の年齢で体質が多少変化してきていることもあるのか、楽に解消することはできなかった。

実際のところ、こんな風に数字で言い表すことは的確ではないのだけれど、感覚でいうと、1週間でやっと15分程度寝やすくなるという感じ。それぐらいのゆっくりさだから、以前のように8時間余裕でどっぷりと眠れるようになるのには、見事に3ヶ月かかった。とはいえ、今も、8時間寝られる日と、眠りづらい日の波がある。

焦燥を感じ、この2、3週間はしょっちゅうネットで身体状況を言葉にし、それをGoogleで検索するということをやっていた。そこで気づいたのは、不眠と肩こり、背中のこりは関係が深いということだ。不眠のうちは、無意識の寝返りをあまりしないので、肩や背中の筋肉の緊張が解けないらしい。

 

そして、体の異様な冷えも自覚していた。普段から冷え性の私は、体が冷えていることに気づけることも少ないぐらい、「冷えない」という状況を知らなかったりするが、そんな自分でも「この腕や足の冷たさは異常だろう」と思うことが増えた。シャワーを浴びた後、風呂上がり、温まったはずなのに体の一部が異常に冷えていて、恐ろしい。そして、頭と首筋から汗が滴り落ちる。これがホットフラッシュというやつか?更年期障害ってこれか?と、慄く。

 

肩こりや背中のこりがひどい。さらには冷えもひどい。だとすれば、普段風呂は半身浴がいいと思って腰から下しか浸かっていなかったけど、一度肩までどっぷり温めてみればいいのではないか?と思いつき、ケチをやめていつもの1.5倍の湯を湯船にためた。そして首のあたりまでしっかり浸かり、風呂から上がると、普段のホットフラッシュのような頭と首筋の異様な汗はなくなり、通常どおりの風呂後の全身のぽかぽかした感覚が戻ってきた。そうか、これだったか、と。

 

それからは毎日きちんと風呂に全身浸かり、肩と背中を温めて、コリがほぐれてきたことを感じる。よくよく検索してみれば、「半身浴は逆に体を冷やすこともあります」なんて書いてある記事もあるじゃないか。湯量が増えて水道料とガス代がちょっときになるが、毎日温泉に行くわけにもいかないし、これで病気を防げるのだとすればなんてことない、と、思うようにしよう。

 

肩と背中のこりがほぐれてきたのを感じ、肩甲骨あたりに手をあててみる。右肩の肩甲骨は輪郭が手で感じ取れるが、左肩の肩甲骨が、腫れのような肉の塊の向こう側にあって、なかなか輪郭をつかめない。左肩、どうなってんの?

 

そこで、今度はあらゆる肩甲骨剥がしと言われる方法を検索しまくり、寝る前にテニスボールやツボ押し機で肩甲骨の周辺をゴリゴリ刺激した。ゴリゴリ刺激すると、なぜか腸が反応してゴロゴロ音を鳴らし始める。背中と腸は、繋がっているらしい。体のいろんなところで血がめぐっておらず止まってしまっていることに気づいた。血や気が全身をめぐらないときは、たいてい、呼吸が浅くなってしまっているらしい。呼吸を深くするぞ、と深呼吸をしようと思うものの、うまくできない。

 

Google検索の知識にさらにGoogle検索を重ね、呼吸のミソをネット上から探してみる。横隔膜を動かして呼吸ができているか? 横隔膜、そういえば最近意識していないな、と重い、横隔膜を動かす呼吸法やストレッチを試してみる。翌日あたりから、腹のあたりが筋肉痛のように気持ち悪くなった。横隔膜の筋力もほぼなくなってしまっていたんだろうか。

 

横隔膜あたりの気持ち悪さをずっと感じて1週間ほど。それでも、呼吸は深くなっていく気はしないし、左側の肩甲骨の輪郭はまだ見えない。もう、鍼灸院に行けよ自分、いい加減に……と自分でも呆れながらも、さらにGoogle検索を重ね、試しにストレッチをしてみることにした。衝動的に、Kindleで手頃で明快でわかりやすいストレッチ本を購入し、寝る前には30分〜1時間ほど、起床後には15分ほど無理のない範囲で毎日ストレッチを行うことにしている。

 

数日間続けるだけで、左肩の肩甲骨の輪郭が見えてきた。私がとことん使えておらず体全体に不快感をもたらす原因となっていた筋肉は、菱形筋という肩甲骨と肩甲骨のあいだの筋肉らしい。座り仕事では一切使わない筋肉、とKindleの本には書いてある。なるほど。

 

不眠になってからも、なるべく、書く/読むという行為はやめたくなく、デスクには基本的に向かいっぱなしだった。平均して1日に30分ぐらいは歩いているが、普通に直立歩行で歩いているぐらいでは、菱形筋は動くことがないだろう。菱形筋を伸ばすストレッチは体のみぞおち辺りの中心部に響き、この筋肉のせいで呼吸が浅くなっていたことも、その響きからよく理解できた。横隔膜辺りが筋肉痛のようになったのも、変に一部だけの筋肉を動かしたからだろう。胴体の中心あたりにあるからこそ、この菱形筋、内臓と結構深く関わるような気もする。

 

菱形筋を伸ばし始めて1週間ほどたった今は、かなり呼吸も楽になってきたが、相変わらず私はデスクに向かうことをやめる気はないので、劇的に改善した、ということはない。

よく、書き物をしている人が毎日1時間きっちり水泳をしていたり運動を続けることで書くための体力を養っている、という話をしているのを見聞きするが、その体力って、本当に死活問題なんだな、と38歳で思い知る。

 

そして、これほど自分が不眠という症状に悩まされなければ、こんな「ストレッチとか運動しなければ身体が使い物にならなくなる」という実感は得られなかったかもしれないので、このタイミングで来るべくしてきた不眠症に感謝するべきかもしれない。

また、身体の声を聞く、身体に耳を傾ける、という作業は、なかなか働きづめの忙しい生活ではできるものではないと思う。なんだかんだで私は無理をしがちだが、身体がやばいというサインを出してきたときには急ブレーキをかけてあらゆる活動をストップさせる度胸みたいなものは備わっている。今回はそれのおかげで(少し急ブレーキを踏みすぎて鞭打ちのような感覚も否めないのだけれど)、身体の声を自分でしっかり聞く姿勢をつくる、ということをできた。あとは、自分の精神的ストレスが身体に影響を及ぼすレベルの感知センサーをもう少し磨きたい。どのラインを超えると、疲れを取り除く強制的な作業に移らなければいけないのか。その観察の眼を養うことができれば、自分の身体ともっと付き合いやすくなるような気がする。