MITEKITEN: 第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』

観てきたもの:【アーカイブ配信】第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』

2020年11月7日(土)・8日(日)・9日(月)に愛知芸術劇場小ホールで開催された「第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』」のアーカイブ配信。

ウェブサイト https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/event/detail/000497.html#000497

 

作:山内晶

演出:篠田千明

出演:アナント・ウィチャクソノ、益山寛司、MIKI the FLOPPY、入馬券

 

鑑賞日:2021年1月16日

 

 

何度も愛知まで観にいくか悩んだ作品だったけれども、当時引っ越しを決断し、往復交通費を出すことも厳しいかもしれないと思い断念。編集された映像で観ることの利点も、欠点も、両方あったと思う。

欠点としては、篠田さんらしい音声をかぶせていく演出(複数の役者が同時に発言する)の部分ではやはりうまく聞き取れない。

利点としては、篠田さんらしい「今どの場所(役者)に集中するべきなのかわからなくなってしまう」演出の際に、迷わず画面を観てればいいこと。これは欠点にもなる。

あと、スマホで戯曲のPDFを観ながら画面を観ることができたというのは、これは劇場で見ていたら絶対できなかったこと。それゆえ、この戯曲の凄さ、存分に味わえたと思う。

 

「なんでこんなに伝わらないかな〜」「あーあー、勘違いされてるっぽいけどまあいっか」「……と、言われております(その根拠は?)」というような事象が全体すみずみにぶち撒けられていて、最近デイジョブで非常に「ディスコミュニケーション」を味わっている身としては沁みる。痛いほど沁みる。

 

真っ黒のブラックボックスの劇場なのに、半分ぐらいからは見事に遺跡に見えたから面白い。あの可動式ステージ、凄い。

 

ディスコミュニケーションと言えば「バベルの塔」なんかも想起させるが、でも同じ言語を使っていても伝わらないこと、継承されていかないことは山ほどある。その時のその人物の都合で、歴史は変わってしまう。世の中そんなことだらけ。そうでしたそうでした。だから、たかがデイジョブでディスコミュニケーションに落ち込んでないで、たくましく生きようぞ。と、背中叩かれる感覚。

 

関係ないが、今住んでいるエリアには平清盛が数ヶ月間だけ都を持ってきたらしくて、町のいたるところにそれを誇り自慢する掲示があって楽しい。移住者としては「ほんまかいな」と若干嘲笑しながらも、そうやって誇るこの町が可愛らしい。(引っ越してきた理由の一つ。)こういうことに関しては、真実はなんだっていいやと思う。

 

全編、インドネシア影絵ワヤン・クリのダラン、ナナン氏(アナント・ウィチャクソノ)が大活躍。ワヤンも、彼の楽器演奏もたっぷり楽しめた作品。影絵ってとても表現豊か。惚れ惚れした。

[伝統芸能×現代芸術]をミックスさせるとアプロプリエーションになってしまいがちだけれど、ワヤンに現代人の人形を登場させたり、ダランをやっていたナナン氏本人が役者にもなり、その流れで自然にインドネシア楽器で劇伴することで、ヒエラルキーがなくなりきちんと混合されていた。