バムソム海賊団ソンゴンのブログ

Twitterにも書いたが、ソウル弘大で繰り広げられたミュージシャン達による社会運動を追った映画『パーティー51』にも登場していたバムソム海賊団(バンド史上何度か目の解散中)のベース&ボーカリストであるソンゴンが始めたブログが面白い。

 

 

김준평의 블로그

http://kjp666.blogspot.com/

 

映画『パーティー51』ツアーの際、トークで彼が非常に若い頃から海外でもリリースしていたことは話題に出した。ソンゴンは10代の頃に폐허(PYHA - ハングルでは廃墟の意味)という一人ブラックメタルプロジェクトをやっていて、14歳の頃に、PYHAの音源がサンフランシスコのtUMULtレーベルからリリースされた。

 

それについてトークで語っている部分はこの記事にも書いている。

映画『パーティー51』上映後トーク:パク・ダハム×バムソム海賊団×ハ・ホンジン×チョン・ヨンテク監督 | Offshore

 

そういえば当時渋谷アップリンクで『パーティー51』の上映とトークイベントを担当してくださっていた、黒光湯や黒パイプの倉持さんが、ソンゴンが10代の当時リリースしていたカセットテープか何かを買っていたらしく、「ソンゴンくんの音源、持ってました!」と言われて驚いた。10代から一人で活躍しまくっていたソンゴンもすごいが、倉持さんのアンテナもすごい。あと、やっぱりこういった特殊でエクストリームなジャンルの音楽というのは、とても狭く濃密なコミュニティを形成する。アップリンクでのトークの日、倉持さんは家からその音源を持ってきていて、ソンゴンにサインを入れてもらっていて、側で見ていてほっこりした。ソンゴンも、いつのまにか映画の上映が日本で決まっていてツアーやるからと連れてこられ、そうしたら東京上映会場の映画館スタッフが自分の過去の音源を持ってたなんて、驚いただろう(笑)。

 

ソンゴンのブログの話に戻ると、彼が高校を中退し音楽にのめり込んだあたりから彼の記憶が綴られている。当時、ソウルでどのような音楽関係者に出会ったのか。メタルではどのようなミュージシャンがいたのか。また、インターネットでどのような出会いがあったのか。Google翻訳では理解に限界があるが、ざっくりとした内容だけでも読んでいて非常に面白い。そして、話題に出てくる当時のミュージシャン(主にブラックメタル)のYouTube動画が貼り付けられているのもうれしい。

 

はっきりと覚えてはいないけれど、2015年の『パーティー51』ツアー当時、ソンゴンはまだ24〜25歳ぐらいだったと思うから、やっと今30歳ぐらいになるのか。彼のInstagramによると、今も彼は一人で怖い音楽を作り、ホラードラマやホラー映画の劇伴をしたり、ちょっとサウンドアート寄りのプロジェクトなんかにも参加していたりするみたいである。

 

最近自分のなかでのちょっとしたブームが、過去のニッチな音楽コミュニティ周辺のストーリーを探ることである。

例えばcontact Gonzoの塚原悠也が出した書籍『Trouble Everyday』では、梅田哲也、江崎將史、ヨシカワショウゴ、和田晋侍らパフォーマティブな音楽家たちへ、フェスティバルゲートとBridgeがあった頃や現在に至るまでの様々な事象を聞き、インタビュー口語そのままオーラルヒストリーとしてまとめずにそのまま綴っている。この書籍、ここ20年ぐらいの関西の音楽を知るうえで一番面白く重要だと思っている。

他にも、ハードコア周辺で書籍が最近多く出ており、先日京都とぅえるぶにて買い占めてしまった。いつ読み始めるのかわからないけれど、積ん読を眺めるだけでもとにかく楽しい最近である。

先日はオフサイトにまつわるトークイベントがSNS上で話題になっていたが、過去は過去であり、やはり当時その渦中にいた音楽家やアーティストは「なんであの当時に注目せんと今ごろやねん」「過去のこと今やるんかい」と思うだろう。その気持ちは十分にわかる。だからあまり大きく話題にしてしまわないような最低限の礼儀をわきまえた上で、彼らが当時どんな社会においてどんな活動をどんな考えのもとに行なっていたのか、それを知り、さらに未来を想像することだけは、どうかお許しください、とも思う。