FIGYA無観客ライブまでの記録ごく一部

先週末にFIGYAが大阪府へ「無観客ライブ配信」支援事業にエントリーした。

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提出書類について、担当者から問い合わせが入ったと聞いた。問い合わせ内容は、対象要件に揃うように、提出した証拠書類の補足や補助資料を追加提出して欲しい、と言う内容だった。

 

書類のすべての再チェックと、企画制作は私もFIGYAと共同で担当しているが、「ここはもしかしたら問い合わせが入るかもしれない」と思っていた部分を見事に指摘された。そう思っていたのなら最初から補足資料を付け加えて提出しておけばよかった、と思うような指摘。きちんと資料を熟読してくださる担当者がいるということで、頭が下がる。そして、こういった資料提出のコミュニケーションのたびに、担当者との信頼関係は生まれていったりする。相手がしっかり資料を読んでくれる人だと言うことがわかり安心も生まれた。

 

ちなみにこの補助金はCovid-19期間中の「ライブ」に関するものである。対象要件のひとつに、過去3ヶ月以内に9回以上(つまりは平均して1ヶ月3回以上)の「ライブ」を行なっていること、というものがある。指摘の一つはここだったのだが、証拠資料として提出したものは「イベント日時」「イベント名」程度しかわからない、Facebookのイベント一覧のコピーだった。担当者は、「ライブが行われていたという証拠が欲しい」とのことだった。

 

「ん?ライブということが特定できなかったのか」と思い、やっとここで認識したのだが、FIGYAは、知らない人からしたら「なにをやってるのかよくわからん」スペースである。そりゃそうだ。

 

ライブをしているのか、展示をしているのか、スタジオとして人が制作しているのか、なんとなく開いていて人がたむろしているのか、トークが行われているのか、プライベートな映画の鑑賞会が行われているのか。

 

事実は上記のすべてがFIGYAで起こっていることであり、他にもあるのだけれど、大阪府のこの補助金は「ライブできなくなった」「ライブハウスに」「観客なしのライブ映像を制作してもらい」「配信してもらう」ということが目的だったのだ。

 

Covid-19移行、できなくなった「ライブ」とは、ステージで演者が演奏しそれを人が見ることである。私たちの周辺では、ライブを熱心に観なかったり適当に見逃したりぼんやり観たりはたまた観ている風に見せて寝てしまったりする客がいることもあるのだが、確かに、普通に考える「ライブ」とは、まったくそんなものではない。客がその演者を応援していたり情熱が飛び交っているものである。対して、私たちが出入りするようなライブは、客が一人とか二人のこともざらにある。

 

また、大阪府は「ライブハウスだけに」この補助金を使ってもらいたいと思っているわけではなく、すでに他ジャンルの交付内定者が公表されている通り、「常態的に、人が演じるものを人が観に来るという営業をしている」ハコやスペースを対象としている。そういえば、「ライブハウス」という言葉があやふやだなということを、大阪府内でライブハウスクラスター騒ぎになった頃から思っていて、ライブハウスの定義とはなんなのだろう。「常態的に、人が演じるものを人が観に来るという営業をしている」ハコのなかでも音楽に特化したハコのことだろうか。けれども音楽といっても本当に掃いて捨てるほどいろんな分野があって、高岡大祐さんが言うように「お通夜みたいな」ライブもたくさんあり、お通夜や葬式のようなライブを専門に扱うライブハウスもある。

 

 

 

FIGYAは、ライブハウスとは自称していないし、ざっくりと「アーティスト・ラン・スペース」と称している。これは、FIGYAで行うイベントや出来事の分野を絞ってしまわないし、あらゆる可能性を受け入れているという表明なのであるけれど、補助金申請書類提出の際には、不明瞭な点となってしまう。

 

 
また、最近の兆候や個人の基準の中だけでの話かもしれないが、一般的に言われる「ライブハウス」のイメージと自分のスペースを区別するために、「ライブハウス」と名乗らない音楽スペースも多々ある。飲食許可を取っていて音楽が鳴っているという2つの点は共通していても、ブッキングマネージャーが設置されていなかったり、ノルマがなかったり、ハコ代が明確に決まっていなかったり、そもそも、バンドの音が出せるほどの防音処理が施されていなかったり。ありとあらゆる音楽のスペースがあり、それぞれ「雰囲気」が明らかに違うのだが、これを言葉にして区別してこなかったからこそ、今、音楽ひいては生演奏を聴くスペースがすべて「ライブハウス」にひっくるめられて「クラスター生産地」のように捉えられてしまっている。

 


あぶれてしまう者たち、カテゴリーに入りきらない者たちがいて、そういう者たちこそが新しい文化を生み出したりするのだけれど、この大阪府補助金においては、あえて既存のカテゴリにFIGYAもフィットしなければならない。そして、既存のカテゴリにもフィットできるFIGYAを証明しておかなければ、対象とならない。複雑な気分なのだけれど、面白い。ただこれは一切私の文句などではなくて、逆に、この補助制度はよく組み立てられているのだと感心した。書類で対象か対象外かを明確に分けることができるし、そこに経験値や実態を汲み取ることでの審査が不要となっている。

 

だとすると、FIGYAがこれから無事に交付内定をもらえたとすれば、既存のカテゴリ内、「ライブハウス」の枠内で、面白い挑戦ができるということでもあると思う。

 

この補助金に応募すること自体がいろいろ考えさせられて本当に良い経験だよね、と、FIGYAの主mizutamaくんとしみじみと話した。

 

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2020年11月、noteで下書き保存していたものを移行して公開