労働者の残暑

食い繋ぐために最近はなりふり構わずバイトに手を出している。こうなってきたら「フルタイムで働いた方がわりがいいですよ」というのは先日友人に言われた話。私も内心はそう思っているが、週3程度のバイトAと、週1程度のバイトBの都合の良さを考えると、この2つを辞めるのはいかがなものかと考え込んでしまう。

 

ターミナル駅直結のビル。上層階にその派遣会社のオフィスはある。日雇い派遣の会社で、幅広い年齢層に向けて仕事を紹介しているらしい。その会社のもっとも目立つ広告は、大学生に向けたキャッチコピーで、金欠をカバーしようだったり友達との旅行にちょっと足りない時にここで働こう!というようなもの。デザインは、明るく、カラフルなイメージ。

 

この1〜2年にできたばかりと見える綺麗なオフィスの中で、明らかに自分より年下であろうスーツを着た女性に応対をしてもらう。まずは書類を渡され、それに全て記入してほしいと彼女は言う。記入例はこちらにありますと、別でファイルを渡してくれた。

このファイルには、日雇い派遣で働ける人とそうではない人の条件が示してあって、読めば読むほど、私は日雇い派遣で働けない人ということになる。ならば、これで帰らなければならないのかも?と思いながらも、とりあえず全部に記入し女性スタッフを呼ぶ。

ざっと私が記入した書類を見た女性スタッフは、あるページのチェック項目に私がチェックをひとつも入れていないこと、またサインしていないことを指摘する。「これではお仕事が紹介できないんで」と言う。私はここで「ん? でも実際のところどの条件にも当てはまらないんですけど」と聞き返すと、「これにチェックを入れてサインしていただいた方が登録完了となってお仕事紹介できますので」と明るく堂々と言われる。ここでは言葉しか書き残せないが、彼女の表情は、要は、「みんなとりあえず自己申告なんで」ということだった。

条件とは、このようなものである。

www.hatarako.net

なんとなくニュースで見聞きしていたような気もするが、要は、年収の少ない人は日雇い派遣に行くとさらに不安定な状況に陥って抜け出せなくなるので日雇いで使うことを雇用主に考え直させるようなしくみである。

生真面目な私はここでこのような派遣会社とは付き合わないという判断をしようかと考えたが、おそらく、今の日本社会はこういう自己申告とか建前とか書類上の体裁だけで成り立って日々の経済が回っている。ガタガタのボロボロ。これはこれで体験してみることがおもしろいのではないかと思い直し、「あー、そういうことですか」とチェックを入れてサインをする。

なんだかんだ、これまで1、2回しかこの派遣会社からの仕事を経験できていないが、派遣先は大手も大手、日本の物流大企業だったりするから、もう日本はここまでヤバいところにきていると実感することができて勉強になった。大手企業こそ、あやふやな日雇い派遣を活用しなければ、維持できなくなっているのだ。いや、勉強になったとかいう感想自体がどこかこの日本社会を俯瞰視して他人事としてみているようで、また、「私はこの人たちとは違う」と距離を置いているようで、よくない。

 

気を取り直して、今度は派遣会社に頼らず別の方法で週2〜3程度の都合のよさそうなバイトを見つけて始めてみたが、今度は自分の体力がまったくついていかないということに気づき、わずか3回程度の勤務でサヨナラすることとなった。

「まあどんな仕事でも選ばなきゃあるんじゃないか」と、頭の片隅のどこかで考えていたが、自分は体力仕事に向いていない。もうまったく向いていない。どんな仕事でもできるという驕りが吹っ飛んでいった。私にできる仕事は、非常に限られている。

 

そうやって舐めてかかって始めたバイトで思わぬ体調不良を招き、寝込んだ日が多かった8月だった。バイト始める→あかんかった、の繰り返しにさすがに私も飽き飽きしている。仕事探しアプリをにらんでいるヒマがあれば、自分で企画を立てて、自分で原稿を書いて、腹を括って生きたほうがいいのでは?とも思う。

 

労働者関連のニュースを見て、今自分の記録のために書き記しておくべきだという気がした。

残暑お見舞い申し上げます。