【編集後記公開】オフショア第四号

前書き全文公開とかが普通なんじゃないかなと思いますが、オフショア第四号は巻頭言や前口上があまりふさわしくないかなと思い、もくじから一気にアンソロジーの本編に入ります。

そんなわけで前書きなしのあとがき有り。編集人の山本佳奈子が書いたあとがきを全文公開しておきます。

ここで書いているんですが、1800円だと本屋では高く感じると思いますが、1000部しか刷らないならこれぐらいにしないと無理でした。ぜひみなさん買ってください。

 

offshore-mcc.net

 

◆編集後記◆

 

 

第一号1600円、第二号1700円、第三号1500円ときて、第四号は過去もっとも高い1800円。この定価なら、買わない/買えないと判断をする人もいるだろう。いくつかのアルバイトを掛け持ちしながら月に10万円未満の生活費でやりくりしている私も、「こんな高い雑誌は買えないよ」と思ってしまっている。電卓を叩きまくって、適切な原価を考え、これが凶と出るかもしれない—書店からのオーダー数がぐんと下がったらどうしよう—と震えながら決断した。ただ、音楽界隈の相場感覚で考える場合、1800円という価格設定はどうか? 別に高くはないと思う。私はCDやカセットテープ購入、ライブ鑑賞にかける相場は2024年現在2000円以上が妥当だと考えている。音楽と活字媒体を同列に並べるのは違うかもしれないが、私はこれまでずっと、バンド活動をやるように、自主音楽レーベルをやるように、小さなメディア活動を実践してきた。もしかしたら書籍界隈の人には「価格設定が強気すぎる」と呆れられるかもしれないけれど、音楽界隈ではわりとあり得る価格設定です。とはいえ、読者の皆様、どうぞ臆することなく、友人同士で貸し借りしたり回し読みしたりしてほしい。

 表紙について触れておこうと思う。どうして犬なのか。理由は簡単で、編集長・発行人である私、山本佳奈子は、犬という動物を敬愛しているからだ。犬は「かわいい」存在で「愛らしい」かもしれないが、それよりも、他者(他犬)との距離の取り方やコミュニケーションがうまく、私は心底尊敬している。ヒトが犬から学べることは数多い。無駄に争わず、いがみ合いを避け、他の種と共存していくことに腹を括っている。おそらく、私は世間一般の「犬好き」とは異なる感覚で、犬という種を愛している。野良犬が佇む表紙写真を撮影したのは大好きなギタリスト・写真家であり、それを大好きなデザイナーに装幀してもらった。また誌面では大好きな音楽家やエンジニアにインタビューし、尊敬する方々に渾身の原稿を寄せてもらった。私個人の「好き」が詰まった号、と言えばなんだかムズ痒いが、スポンサーもなく法人でもなく個人が世に出す雑誌である。これまでの3巻は「こうあるべき」を目指していたが、今号からは「やりたいようにやること」とした。即ちそれが無理しない自然なPR活動にもつながり、過度に売りまくらなければならない資本主義経済への抵抗にもなるはずだ。背伸びせず普段着で、自然にやる。