映画レビュー:陳思誠『唐人街探偵 東京MISSION』と柯汶利『共謀家族』

『唐人街探偵 東京MISSION』は映画シリーズ『唐人街探案』の3作目。1作目と2作目についてはここに書いた。 yamamotokanako.hatenablog.com 監督は、ロウ・イエ監督『スプリング・フィーバー』で三角関係となる探偵役だった陳思誠。役者と監督の両方を続け…

東京オリンピック2020開会式についての若干の意見

あまりにも悲しい開会式だった。東京五輪開会式。 芸術や創作の嗜好で言っているのではない。そこに、世界の人に向けて訴えたい日本文化のアピールも、式全体をまとめあげるスケールの大きな物語も存在しなかった。 とは言いつつ、家にテレビはないのでYouTu…

身体の声を聞き観察する/不眠と肩こりとストレッチ

肩こりと背中のこりがひどく、どうしたものか困り果てていて、こんなときはたいていの人はマッサージや鍼灸院に行ったりするのだろうけど、なぜか意地でも行かず、じっと家で自分の身体の声を聞こうと健気に日々試行錯誤をしていたら、理解できたことがいく…

映画レビュー:張艾嘉『相亲相爱』/黄渤『一出好戏』

長引く雨。長引く私の背と肩のコリ。そろそろ1週間ぐらい連続で毎日全身風呂に浸かっているが、それでもコリが取れない。鍼に行くか悩みつつも、最近医者にかかりすぎでこれ以上医療費払うのもなあ、と躊躇する。ではせめて自分で少しでも楽に、と、百均で…

中国の農民工問題と元農民工である俳優・王宝強の人気について

『唐人街探案』について調べて書いていたときから、このシリーズの主役である王宝強(ワン・バオチャン)の中国における人気と人間像と中国社会の関係が、非常に興味深いことに気づき、勝手に一人で「王宝強レトロスペクティブ」をしている。(要は、王宝強…

中国でタイ観光ブームをもたらした大ヒット作/映画レビュー:徐峥『ロスト・イン・タイランド』

2013年頃だったか。Offshoreを初めてまだ数年の頃。コロナなんて存在せず、LCCも安く、私の当時の収入もそれなりに安定していたのか、数ヶ月間の海外旅行が可能だった。貯めたお金で、数ヶ月東アジアの各地に滞在し、フラフラしながら取材をすすめる、なんて…

神戸豚まん調査(2)豚まんを食べながら歩く

神戸に引っ越しを決める前に、「神戸に住むのもいいかもしれない」と思ったきっかけがある。平民金子さんの著書『ごろごろ、神戸。』を読んだことである。平民さんは、この本の中で、ご自身の子供をベビーカーに乗せて、ベビーカーをごろごろと押しながら神…

中国映画『唐人街探案』に映される中国国内でのタイとアメリカのイメージ

2021年7月、『唐人街探偵 東京MISSION』という中国映画が日本で公開されるという。中国で超人気、興行収入が桁違いの映画シリーズ『唐人街探案』の3作目となる。(※1、2作目は日本で公開されていないため、中国語原題の『唐人街探案』と表記する。)…

イメージが刷新され続ける中国愛党映画〜『1921』共同監督・鄭大聖について

上海国際映画祭が、今週末から始まるらしい。オープニング作品は『1921』という映画。2021年は中国共産党の誕生100周年。100歳記念で製作された映画である。 youtu.be 上海国际电影节 中国の人気若手俳優、人気中堅俳優達が出演している。日本人が想像しがち…

神戸豚まん調査(1)皮と餡の特徴なし

以前、大阪市此花区に居住していたわずか1年ほどのあいだに、大阪の中華料理屋と中華食材屋についてほんの少し調べて書いたzineを発行した。そのあとがきに、「神戸に引っ越すかもしれない」と書き、そして実際に私は神戸に引っ越した。 神戸に引っ越したら…

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/5/23

思い立って新長田周辺に行ってみることにした。神戸に引っ越してから、「山本さんは長田とか好きそうですね」と幾人かに言われたことがあり、そう言われるのなら歩いてみたい、と思っていた。おそらく、私に「好きそうですね」と言ってきた人たちは、新長田…

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/5/5

軽い鬱状態に入ったのでそそくさと心療内科で睡眠剤とモチベーションを下げない薬を調達した。鬱だとか堂々と書くとギョッとする人がまだいるかもしれないが、この症状はいたって一般的でありふれている。私は15年前ぐらいに数年間かけて元に戻すほどのきつ…

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/4/29

近所に別に美味しくはないけれども昔ながらのふわふわ甘々菓子パンがずらっと揃うパン屋があり、つい、おやつに買ってしまう。昼前に起きて、そこのパンが食べたくなり、濡れてもいいスニーカーを履いてパン屋に向かったが、今日は定休日だった。 とにかく甘…

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/4/25

なかなか思うように自分の人生は整備されない。こっちにいってみたらきっとのんびりと平和に楽しく暮らせるんだと思っていたら、それがまた想像もしていなかったいばらの道。こんなはずちゃうかったんや、と、悔しい気持ちで風呂に入る。風呂は最近読書の時…

転職における思考記録

約1ヶ月間ぐらい年度末らしい見事な忙しさだった。デイジョブの転職活動も重なったから、もうそりゃ大変だった。 2015年沖縄に行き、2017年福州へ留学し、2018年那覇に戻り、2019年には大阪に引っ越し、2020年には神戸に引っ越した。紆余曲折、デイジョブも…

MITEKITEN: 『¿Music?』サンガツ

観てきたもの サンガツ『¿Music?』2021年2月20日(日)15:30〜会場:京都府 ロームシアター京都 ノースホール料金:前売3,000円 * のっぴきならない事情で冒頭10分ほど遅刻してしまう。(ゴメンナサイ) 最初から最後まで、サンガツの誰も姿を現すことがな…

MITEKITEN: 『イッツ・ア・スモールワールド(KYOTO EXPERIMENT)』と演劇配信『人類館』

京都国際舞台芸術祭 Kyoto Experimentの『イッツ・ア・スモールワールド』という展示へ。 kyoto-ex.jp 時間を忘れるほど、膨大で濃密で、かつ多角的に「搾取する」「搾取される」「観る」「観られる」ことを考える展示だった。「帝国主義の悪質なスペクタク…

思い出した

帰宅すると、今尾拓真個展『work with #9(CLUB METRO空調設備)』について3人が書いたテキスト集が届いていた。 work with - imao takuma works 私以外にキュレーターの檜山真有さん、小説家の大前粟生さんが書いており、3人が3人とも全く別の方向を向い…

バムソム海賊団ソンゴンのブログ

Twitterにも書いたが、ソウル弘大で繰り広げられたミュージシャン達による社会運動を追った映画『パーティー51』にも登場していたバムソム海賊団(バンド史上何度か目の解散中)のベース&ボーカリストであるソンゴンが始めたブログが面白い。 Googleでの日…

デイジョブと生活と収入の均衡

求人情報をよく見るようになると、必然的に脳内で自分の経験や職歴、やりたいこととやりたくないこと等の棚卸しが脳内で行われる。ときたま本当に思い出したくない昔のことも思い出してしまったりして、鬱屈とした気分になる。早く、新しい生活始まれ。新し…

MITEKITEN: 角田俊也『風景と声』外(京都)

観てきたもの: 角田俊也「風景と声」Toshiya TSUNODA “Landscape and Voice” 会場: 錦林車庫前 外 観てきた日:2021年1月24日 * 15cmぐらいの距離で向かい合ったスピーカー、左からは子音にあたるアタックの強い環境音が、右からは人の声の母音が流れる。…

MITEKITEN: 荒木優光『わたしとゾンビ』京都市京セラ美術館The Triangle

観てきたもの: 荒木優光:わたしとゾンビ2020年12月12日-2021年2月28日 会場 京都市京セラ美術館[ ザ・トライアングル ] 観た日:2021年1月24日 圧倒されるほど豪華な4Kモニター、スピーカーがぐるぐる回る。 三角形の空間で、キャンプチェアに座ってしば…

阪神大震災の記憶

阪神大震災の頃は11才(小学五年生)で、住んでいた地域は尼崎市で比較的被害も少なかったが、とんでもないことが起こったんだなあということは子供なりにも理解していた。2020年10月に神戸市に引っ越してきて、1.17が再び身近になっている。 阪神大震災の頃…

MITEKITEN: KAYU NAKADA 『Circuit board Stacking Sculpture』

観てきたもの: 中田粥 個展『Circuit board Stacking Sculpture』 会場:FIGYA 鑑賞日:2021年1月6日 * 基盤をショートさせて演奏している中田粥が、43個の基盤を組み合わせた音とオブジェのインスタレーション作品。 攻殻機動隊を想像させる。基盤=脳、…

MITEKITEN: 第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』

観てきたもの:【アーカイブ配信】第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』 2020年11月7日(土)・8日(日)・9日(月)に愛知芸術劇場小ホールで開催された「第18回AAF戯曲賞受賞記念公演『朽ちた蔓延る』」のアーカイブ配信。 ウェブサイト https://w…

対コロナ便乗型生活見直し記録2021/1/16

※このテキストはほぼ本人のためのメモ書き、日記程度のもので、誰か他人に理解を求めようとか伝えたいことがあって書いているわけではございません。読んでも面白くなかったり「は?」かも。 ── 珍しく会食したメンバーで、「コロナは風邪」だとか「トランプ…

『薬の神じゃない!』から思い出した中国の音楽聴取方法との付き合い方

デイジョブはまったく中国もポピュラー音楽も関係のないアートマネジメントと呼ばれるような、ようは文化施設の何でも屋さんみたいなことをしている。たった週3での契約だが、週3であってもやり取りする人が私の週3出勤日に合わせて動いてくれるわけでは…

映画レビュー:文牧野『薬の神じゃない!』

2018年、コロナ以前に中国で公開されていた映画をコロナ禍のなか今やっと日本で見るという、この時差。とにかく日本国内でのパンフレットが制作されていなかったようなのが残念。これでもかというほど、中国の社会問題や特徴となる要素が詰まっている。 まず…

"オンラインワークショップ 「ポピュラー音楽と文化助成〜COVID-19による影響」"を終えて

オンラインワークショップ 「ポピュラー音楽と文化助成〜COVID-19による影響」が終了。 プレゼン資料を作り始めると止まらなくなってしまった。これまで文化政策とポピュラーカルチャーのあいだで、両者を繋ぐ翻訳や通訳がされることがなく、言葉の選び方や…

対コロナ便乗型生活見直し記録12/21

飛ぶように一年が過ぎた、とはおそらく全世界の人が思っているんじゃなかろうか。年末の感覚は、野菜や魚、肉を買いに行く市場の、おせち予約販売のチラシや大量の数の子、ごまめ、黒豆、そういったものでやっと感じることができる。けれどこのまま年を越す…