別冊Offshore(Offshoreからはみでた中国語圏やアジアの文化芸術)

映画レビュー:『シャン・チー』から東洋に住む私は何を読み取ったか

映画は政治抜きに語ることはできないコンテンツである。ストーリーに社会や政治が反映されることはもちろん、その製作資金あつめや配給などを円滑に進めることは、交渉や駆け引きが必須となり、政治そのものである。出来上がった映画を観る者は、金持ちから…

クロスレビュー(年間パスがお得※私は9/30に)

演出家である篠田千明(しのだちはる)さんの『ZOO』(原作:マヌエラ・インファンテ)が、2018年の乌镇戏剧节(Wuzhen Theatre Festival)に招聘された時、私も一緒に乌镇(Wuzhen)に行った。渡航まで半年以上にわたる契約書のやり取りから現地フェスのマ…

文脈で聴く中国音楽

最近はSpotifyで中国のロックやポップスをたくさん聴くことができて便利でありがたい。中国国内ではSpotifyはブロックされていて使えないらしいが。 窦唯や万能青年旅店などは、私のSpotify内で、かなり再生回数が多い。けれども、2011年から東アジアの音楽…

映画レビュー:陳思誠『唐人街探偵 東京MISSION』と柯汶利『共謀家族』

『唐人街探偵 東京MISSION』は映画シリーズ『唐人街探案』の3作目。1作目と2作目についてはここに書いた。 yamamotokanako.hatenablog.com 監督は、ロウ・イエ監督『スプリング・フィーバー』で三角関係となる探偵役だった陳思誠。役者と監督の両方を続け…

映画レビュー:張艾嘉『相亲相爱』/黄渤『一出好戏』

長引く雨。長引く私の背と肩のコリ。そろそろ1週間ぐらい連続で毎日全身風呂に浸かっているが、それでもコリが取れない。鍼に行くか悩みつつも、最近医者にかかりすぎでこれ以上医療費払うのもなあ、と躊躇する。ではせめて自分で少しでも楽に、と、百均で…

中国の農民工問題と元農民工である俳優・王宝強の人気について

『唐人街探案』について調べて書いていたときから、このシリーズの主役である王宝強(ワン・バオチャン)の中国における人気と人間像と中国社会の関係が、非常に興味深いことに気づき、勝手に一人で「王宝強レトロスペクティブ」をしている。(要は、王宝強…

中国でタイ観光ブームをもたらした大ヒット作/映画レビュー:徐峥『ロスト・イン・タイランド』

2013年頃だったか。Offshoreを初めてまだ数年の頃。コロナなんて存在せず、LCCも安く、私の当時の収入もそれなりに安定していたのか、数ヶ月間の海外旅行が可能だった。貯めたお金で、数ヶ月東アジアの各地に滞在し、フラフラしながら取材をすすめる、なんて…

中国映画『唐人街探案』に映される中国国内でのタイとアメリカのイメージ

2021年7月、『唐人街探偵 東京MISSION』という中国映画が日本で公開されるという。中国で超人気、興行収入が桁違いの映画シリーズ『唐人街探案』の3作目となる。(※1、2作目は日本で公開されていないため、中国語原題の『唐人街探案』と表記する。)…

イメージが刷新され続ける中国愛党映画〜『1921』共同監督・鄭大聖について

上海国際映画祭が、今週末から始まるらしい。オープニング作品は『1921』という映画。2021年は中国共産党の誕生100周年。100歳記念で製作された映画である。 youtu.be 上海国际电影节 中国の人気若手俳優、人気中堅俳優達が出演している。日本人が想像しがち…

バムソム海賊団ソンゴンのブログ

Twitterにも書いたが、ソウル弘大で繰り広げられたミュージシャン達による社会運動を追った映画『パーティー51』にも登場していたバムソム海賊団(バンド史上何度か目の解散中)のベース&ボーカリストであるソンゴンが始めたブログが面白い。 Googleでの日…

『薬の神じゃない!』から思い出した中国の音楽聴取方法との付き合い方

デイジョブはまったく中国もポピュラー音楽も関係のないアートマネジメントと呼ばれるような、ようは文化施設の何でも屋さんみたいなことをしている。たった週3での契約だが、週3であってもやり取りする人が私の週3出勤日に合わせて動いてくれるわけでは…

映画レビュー:文牧野『薬の神じゃない!』

2018年、コロナ以前に中国で公開されていた映画をコロナ禍のなか今やっと日本で見るという、この時差。とにかく日本国内でのパンフレットが制作されていなかったようなのが残念。これでもかというほど、中国の社会問題や特徴となる要素が詰まっている。 まず…

映画レビュー:陳凱歌総監督『愛しの母国』ルル・ワン『フェアウェル』

『愛しの母国』(現題:我和我的祖国)は中華人民共和国建国70周年の2019年、建国記念日である国庆节(10月1日)に中国で公開された、中国を讃える愛国映画と言える。 私は中国の実験的な音楽や地下音楽、とにかく音楽を中心に調べているのだけれど、なぜよ…

中国の音楽を聴く -郝云と小河を例に

本チャンのOffshore記事が全然書けないのに別冊だけが溜まっていく……。 引っ越し後いまだ慌ただしく、今日も通販で届いた収納用品を朝から開梱し、部屋内に溢れ出ているものを収納していく。数日前に観た映画『愛しの母国』(現題:我和我的祖国)の一編でテ…

映画レビュー:王兵『死霊魂』/刁亦男『鵞鳥湖の夜』

うっかりしていると見逃してしまう中国映画。大阪にいると、続々と新しい中国映画が公開されるから忙しいしお金もかかる。いつも映画を観に行きたいときは「本当に自分は観たいと思っているのか、絶対映画館で寝たりしないんだな?」と問いただしてから観に…

東アジアのポップ・ミュージックの連環について、静かな期間に考える〜KITAKAGAYA FLEA『東アジアの街と音楽』トーク後雑感

今日、昼前に『東アジアの街と音楽』というタイトルでKITAKAGAYA FLEAにて配信トークに出演してきた。私が主催のインセクツからコーディネイトを含む依頼を受け、台湾と中国をメインに音楽プロモーターとして活動している寺尾ブッタさん、ソウルで喫茶店を営…

毕赣最新2作レビュー - 描かれる中国の地方の現実

中国発の映画はなるべく観るようにしているが、なぜか『凱里ブルース』と『ロングデイズ・ジャーニー』には「ふーん、胡波(※映画『象は静かに座っている』監督で1989年生まれ、2017年に自殺し逝去)と同世代の、中国出身の監督か〜」と思ったぐらいで、あま…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/17

自分の棚卸し作業中。今の自分の興味はつまるところどこなのか。それを書くためにはまず何から始めて何を調べなければいけないのか。等等。 ついでに、自分のこれまでの書き方や表し方も一度確認し、棚卸しできることはしたほうがいいと思っている。これから…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/14

「軍艦島で朝鮮人差別存在せず」というニュースを見て仰天する。反射的に浮かんだ思考は、「わたしがやっとったことは何の役にもたってへん」だった。 news.infoseek.co.jp いくつかアジアのバンドの日本でのライブツアーをプロデュース・オーガナイズしてき…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/13

難波なんて何ヶ月ぶりだっただろう。乗り換えだけだったが、確かにこれまでの土日と比べると人は少ない。 大阪メトロに乗車すると、車内の吊り広告が基本的に半面になっていたり、ドア横の貼り(?)広告は、ほとんどが大阪メトロの掲示物になっている。民営…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/11

世の中はどんどん普通に戻っていく……。と、ひたすら心の中で嘆いているのだけれど、では普通にもどっていくとはどのような事象から感じているのか。ものすごく曖昧な空気感で勝手に落ち込んだりするのはよくない。 イライラすることが多い。イレギュラーなこ…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/8

ここ数日顔面がチクチクするなと思っていたら、6/6土曜に鼻水とくしゃみと涙が止まらなくなる。職場でだんだんとそれらの症状が出てきて、さすがに他のスタッフに申し訳なくなる。が、これは確実に、外が白くぼやけていたし、黄砂かPM2.5のはず。 日曜もまっ…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/4

マスク警察にならないように気をつけて仕事をする出勤2日目。やっぱり通勤することによるメリハリは、大事。あと、外食をまったくしなくなったから、舌が薄味に慣れていて、おにぎりとスープ程度の昼食、おにぎりだけの夜ご飯で、十分満足できる。Covid-19…

対コロナ便乗型生活見直し記録6/3

昼から夜まで働くので、2食分持って出勤すると、まるでキャンプに行くような荷物だった。おにぎり4個にサーモスのスープジャー。お茶の入った500mlの水筒。まるで山小屋で一泊してくるような装備。いや、山小屋だったらもっと何かしらモノがいるか。 出勤…

対コロナ便乗型生活見直し記録5/31

自室に網戸をくぐり抜けた小さな虫がちらほら増えてきた。夏らしい。フタつきのゴミ箱をきちんと毎回閉めるようになった。ゴミ箱は、那覇に住んでいた頃にメイクマンで買ったものをいちいち大阪に送って使っている。100均で買ったものと大きすぎてゆうパック…

対コロナ便乗型生活見直し記録5/25

まったく休業にはなっていないけれど、在宅ワークにより通勤の時間は減っているし、時間を持て余しそうな予感がしたので、過去に作ったDISCASのIDとパスワードを引っ張り出してきて、とにかく大量にDVDを借りた。 中国の、まったく有名ではない映画をたまに…

今後のOffshore(海外交流プロジェクト)を予測する

少しお金が貯まれば日本以外のアジア、特に中国語圏へ行く航空券をポケットマネーで買い、現地の音楽やアートの情報を集め、実践者に取材をし、それをウェブサイトで記事にするということをやってきた。2011年頃から続けていて、平均して年に3回くらい、出…

AMN報告会での私の発言の補足。

3/10、国際交流基金さくらホールにて、「Asian Music Network 報告会」に登壇してきた。役割としては、Asian Music Networkが年次で開催しているフェスティバル、2016年12月に開催されたシンガポール・クアラルンプールでのアジアン・ミーティング・フェステ…

3/10のAMN報告会で話した原稿

※数字はプレゼン用スライドの番号です。(キーワードを要約して書いていただけなので省略) 1アジアン・ミーティング・フェスティバル2016、シンガポールとクアラルンプールでのフェスティバルに参加しました。 Offshoreの山本佳奈子と申します。Offshoreは…